森さんはこんな人

2019年3月、私は森さんに会いました。
森さんは、介護医療院の陽光が差し込む共有スペースで、パソコンに向かっていました。
近くにナースステーションがあり、医師や看護師、介護職員の方々が、執筆中の森さんを遠くから見守っています。身体と頭の両端を介護チェアーで固定された森さんの身体はピクリとも動きません。まぶたの下の目だけがかすかに動いています。これが視線入力で、モニターに文字が次々と映し出していきます。ミスタッチが全くないので、私が文字を打ち込むスピードより速いことに驚きました。

森さんが綴っているのは、介護職員の対応への告発だけではありません。
かつて米国で住み、大型のコンボイの運転手として、アメリカ大陸を縦横に走っていた時のこと、セスナを操縦したくて英語の教本で勉強し、実地トレーニングを受けて見事アメリカのパイロット資格を取ったこと、若い頃から語学を独学し各国を旅したこと。文章からは、行動力あふれる生涯が浮かび上がってきます。