森さんとの出会い

そんな私のところに、2018年、全身麻痺の患者さんが書いた文章がメールで送られてきました。
書き手は72歳の男性。脳梗塞とリステリア脳炎を患い、右腕と首がかすかに動くのみで言葉も発することができない。そんな状態で、視線の動きを文字に変換するソフトの助けで、書いたとのこと。そこには驚がくの事実が綴られていました。

「じじい、汚い」、「痩せるか、死ぬかして」。
森さんにぶつけられる介護者の残酷な言葉、粗雑な扱い。
介護者は、森さんが言葉で抗議することも、家族に伝えることもできないとわかっているからこそ、ひどい扱いを続けたのです。
読み始めた私は、衝撃で震えが止まりませんでした。
森さんはその施設で2年間、寝たきりで天井を見つめながらじっと耐えて過ごしました。現在の施設に移って視線入力という方法を知り、文章を綴り始めました。
森さんはこの文章が本になることを強く願っています。